GMTとUTCの違い
混同されがちなGMT(グリニッジ標準時)とUTC(協定世界時)の違いを解説します。
GMT(グリニッジ標準時、Greenwich Mean Time)とUTC(協定世界時)は、日常会話ではほぼ同じ意味で使われますが、本来は成り立ちが異なる別の概念です。
GMTはもともと天文学の基準だった
GMTは、イギリス・ロンドン近郊のグリニッジ天文台を通る経度0度(本初子午線)における「平均太陽時」をもとに定められた時刻です。太陽が真南(南中)にくる瞬間を正午とする考え方が土台になっています。1884年に開催された国際子午線会議で、グリニッジ子午線が世界の経度・時刻の基準として正式に採択され、それ以降、世界各地のタイムゾーンは「グリニッジより何時間進んでいる/遅れている」という形で定義されるようになりました。19世紀後半には鉄道網の拡大にともない、都市ごとにバラバラだった地方時を統一する必要性が高まったことも、GMTが世界標準として広まった大きな要因です。
UTCは原子時計にもとづく現代の基準
天体の動きにもとづくGMT(天文時)に対し、UTCは原子時計による極めて正確な「秒」の積み重ねで定義されています。UTCが正式に制定されたのは1972年で、それ以前は「UT1」と呼ばれる、地球の自転そのものを直接観測して定めた時刻系が国際的な基準として使われていました。地球の自転速度はわずかに変動するため、UT1(天文時)とUTC(原子時)の間には理論上ごくわずかなずれが生じますが、うるう秒による補正のおかげで、実用上その差は常に0.9秒未満に保たれています。
実務上はほぼ同じものとして扱われる
そのため、日常的にも技術的な文脈でも「GMT」と「UTC」はほぼ同じ意味で使われます。ただし、イギリスなど一部の国では、冬季(サマータイムを実施していない期間)の標準時の名称として今も「GMT」という呼び方が残っています。イギリスのサマータイム期間中は「BST(British Summer Time、UTC+1)」と呼ばれ、GMT(UTC±0)とは異なるオフセットになります。つまり「ロンドンは常にGMT」というのは誤りで、夏の間はGMTより1時間進んだ時刻になっている点に注意が必要です(ロンドンの現在時刻で今どちらかを確認できます)。
タイムゾーン名としての落とし穴
コンピューターのタイムゾーン設定でよく使われるIANAタイムゾーンデータベースには「Etc/GMT+9」のような表記が存在しますが、ここでの符号は日常の直感と逆になるという有名な落とし穴があります。POSIX(Unix系OS)の慣習に由来するもので、「Etc/GMT+9」は実際には「UTCより9時間遅れた」タイムゾーンを意味します。このサイトでは都市ごとに「Asia/Tokyo」のような地理的な名前のタイムゾーンを使い、符号の紛らわしい「Etc/GMT±N」形式は内部処理でも表には出さないようにしています。
国際規格や技術文書ではUTCが標準
国際規格(ISO 8601の日時表記など)や、航空・コンピューターの分野の技術文書では、あいまいさの少ない「UTC」という表記が標準的に使われます。HTTPの通信プロトコルの一部にはヘッダーの日時表記で歴史的に「GMT」という文字列がそのまま使われている例も残っていますが、これも実質的にはUTCと同じ値として扱われます。新しく何かを設計・実装する際は、GMTではなくUTCを基準にするのが現代の作法です。