国際宇宙ステーション(ISS)のタイムゾーンは?
国際宇宙ステーション(ISS)はどの国のタイムゾーンにも属さず、UTCを基準に生活している。90分周期の軌道と乗組員の時間管理を解説する。
地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)には、実は「ここの標準時」と呼べる地上のタイムゾーンが存在しない。ISSで採用されているのは、特定の国のローカルタイムではなく、協定世界時(UTC)である。
なぜ特定の国の時刻を使わないのか
ISSはロシア(モスクワ管制センター)とアメリカ(ヒューストンのジョンソン宇宙センター)による共同運用が中心となっている国際プロジェクトであり、モスクワ時間にもヒューストン時間にも偏らない、中立的な基準時刻が必要とされている。仮にどちらか一方の地上時間を採用すれば、もう一方の管制チームや乗組員にとって不自然な時差が生じてしまう。UTCという世界共通の中立的な基準を使うことで、地上のどの管制拠点とも公平にやり取りできる体制が保たれている。
1日に16回訪れる日の出と日の入り
ISSは高度およそ400キロメートルの軌道を約90分で1周しており、この速さのために、機内からは1日のうちに日の出と日の入りをそれぞれ16回ずつ目にすることになる。地上の生活であれば太陽の動きが昼と夜の感覚、ひいては生活リズムの基準になるが、ISSでは太陽が90分ごとに昇っては沈むため、そうした自然な昼夜のリズムをまったく当てにできない。
人工的に作られた「勤務時間」
そこでISSの乗組員は、UTCを基準とした人工的な勤務スケジュールに従って生活している。起床、作業、食事、就寝といった1日の区切りはすべてUTCの時刻をもとに管理されており、窓の外の光の状態とは無関係に、あらかじめ決められた時間割にしたがって行動する。地球上のどの国のタイムゾーンにも属さない、宇宙空間ならではの時間の運用方法だといえる。
多国籍の乗組員をつなぐ共通の時刻
ISSにはロシアやアメリカだけでなく、日本やヨーロッパ各国など、さまざまな国から派遣された宇宙飛行士が同時に滞在することも珍しくない。それぞれの出身国のタイムゾーンをそのまま持ち込んでしまえば、誰の生活リズムを優先するかという難しい調整が必要になってしまう。UTCという万国共通の基準時刻を採用することで、乗組員の国籍にかかわらず、全員が同じ1つの時計にしたがって共同生活を送ることができる。地上の管制官との交信スケジュールや実験の手順書もすべてUTC時刻で統一されており、宇宙という特殊な環境における国際協力を支える土台になっている。